皆さんこんにちは。
一般社団法人かたわらの高橋悠太です。
2024年5月14日(火)・15日(水)にイタリアで開催された「C7サミット2024」に、日本のCSO(市民社会組織)の代表者が参画しました。「G7サミットに日本の市民社会の声を届けるプロジェクト」の一環です。一般社団法人かたわらの高橋もその1人として、渡航し、アドボカシーを行いました。さらに、「核兵器廃絶」の分科会に登壇し、現地の大学生ら参加者と対話しました。広島でのG7サミットから1年(2023年5月19日開幕)に合わせて、核兵器廃絶の視点で、印象的であった瞬間をいくつかまとめました。(1年前のブログ記事はこちら。)
※C7(Civil7:市民社会)はG7の公式エンゲージメントグループ(国際社会において各国政府から独立した立場のステークホルダーにより形成される団体)の一つとして、G7との対話、政策提言、共同声明等を行っています。 「C7サミット2024」でも核兵器廃絶が主要議題の1つとなった
昨年の日本の市民社会・被爆者の皆さんたちの尽力と、主催国イタリアのNGOの配慮で、しっかりと核兵器廃絶がアジェンダに残った印象でした。C7シェルパのヴァレリア・エンミさんはオープニング時に「昨年の日本でのG7 / C7開催を踏まえて、議題を設定した」と発言しました。(彼女は、昨年来日し、岸田首相へのC7提言書手交にも立ち会い、その場には被爆者の田中聰司さんもいらっしゃいました。) 昨年はC7の中に「核兵器廃絶(nuclear disarmament)」のワーキンググループ(WG / 作業部会)が設立されました。今年は「平和、共通の安全保障、核兵器廃絶(Peace, Common Security and Nuclear Disarmamant)」と広範なテーマのWGに改編されましたが、WGコーディネーターはお2人とも核兵器廃絶を専門としています。フランチェスコ・ビニャルカさん(GCAP イタリア/イタリア平和軍縮ネットワーク)と、エミリー・モリナリさん(IPB)です。また、ワーキングペーパーのドラフト担当者のショーン・コナーさん(IPB事務局長)も核兵器廃絶に詳しい方です。(これまで、私はNPTや核兵器禁止条約の会議で、直接イタリアの市民社会とお会いしたことはなかったのですが、少数精鋭で粘り強く頑張っておられる様子でした。)そうした人選からも核兵器廃絶の優先順位が高かったことが伺えます。
イタリアのNGOから、「核兵器廃絶を軸にどう世界の課題にアプローチできるか」という視座をもらう
先述のショーン・コナーさん(IPB)が分科会に登壇した際、「核兵器廃絶が最終総会の中心テーマとなり、この2日間にわたって議論するさまざまな問題を結び付ける手段にもなると期待しています。そのすべて(の努力や取り組み 註:高橋追記)が平和だけでなく、すべての人にとっての正義へと導きます。」と発言していました。たしかに、核兵器廃絶のためには、多国間主義も、国際人道法も、市民社会からの働きかけもすべて重要で、現在のG7の体制をごっそり転換するようなアプローチが必要です。非常に大局的な見地からの呼びかけだったと思いました。
翻って、核兵器廃絶を求める日本の市民社会が他の課題や、G7のような多国間・多分野協議の枠組みに関心を寄せる必要性を改めて感じました。昨年のG7広島サミットが核兵器廃絶・核軍縮以外の枠組みに、関心を寄せ、出向いて問題提起する契機になりました。この流れを自国開催以外の時にこそ、強化することが必要です。その点、ショーンさんたちC7サミットの中でのイタリアのNGOを見ていると、どうやって核兵器廃絶を主要な課題として位置付けるか、(多くの関心を集め、他者と連携するために)核兵器廃絶への取り組みを他の課題の解決策としても位置付けられるか、という観点で動きを作っていて、非常に勉強になりました。
地元の大学生との対話から
C7サミット2024の参加者は約400人。その多くを、地元の大学生(若い世代)が占めていました。聞くと、地元の大学でこのC7サミットの案内があった、とのこと。
私が登壇した分科会「核兵器廃絶」にも全体30名ほど参加の中、ほとんどが同年代の大学生でした。発言骨子はこちら。発言では昨年の広島サミットの課題や、被爆者7団体との意見交換の様子、地域で核問題を考える意義、ジェンダー平等や様々な正義の視点などについて言及しました。 発言後の質疑応答で、大学生と思しき参加者から、他の若い世代の登壇者(アレッシアさん / センツァトミカ所属)と私を挙げて「若い世代にどれほどの力があるのか」というような発言がありましたので、被爆者7団体との意見交換で伺ったことを伝え、「これまで多くの"一般の人々"が動いてきたから今がある。私たちは歴史の正しい側にいる」と訴えました。
私が、核兵器廃絶セッションに参加した後、グローバルガバナンスを専攻しているインド出身で、イタリア留学中の学生が話しかけてきて、「これまでガバナンスの観点からしか核兵器を考えてこなかったが、人道的な視点や、それを推し進める市民の役割の重要性を知った」と語りました。日本の市民社会として、発言させてもらってよかったな、と思いました。
来年のカナダ開催に向けて
C7運営委員の堀内葵さん(JANIC)に紹介いただき、来年のカナダの市民社会の代表者ともつながりました。ただ、核兵器廃絶について連携したいと言うと、彼は「カナダは、核兵器廃絶にそこまで熱心ではないからね...」という反応で、また、カナダ在住の被爆者のサーロー節子さんをご存知なかったので、ご説明して、重要な問題である、と伝えました。実際、カナダは地雷廃絶などに尽力してきた国なので、引き続き核兵器廃絶も主要なテーマの1つとなるように、連携ができれば、と思って働きかけをしています。ここで頑張らないと、来年こそ核兵器廃絶が落ちてしまうな、と思いました。再来年の核保有国フランスでの開催に核兵器廃絶のアジェンダを残すことが当面の目標ではないでしょうか。そうした変化こそ、広島サミット開催の本当の意義の1つだと思います。
お問い合わせはこちらまで。 y-takahashi[@]katawara.org (高橋)
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