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執筆者の写真高橋悠太

【渡航報告】国連会合「未来サミット」のため現地ニューヨーク渡航し、核兵器廃絶とユース参画に向けた日本のユース・市民社会の声を届けました

更新日:10月31日

みなさん、こんにちは。 一般社団法人かたわらの高橋悠太です。 9月中旬、国連が開催した「未来サミット」に参加のため、現地ニューヨークに渡航しました。「未来サミットとは何か」「どのような取り組みを行い、どんな変化があったのか」レポートをまとめました。


1.   未来サミットとは

来年、国連は創立80年を迎えますが、自国第一主義が横行し、十分な力を発揮しきれていません。犯罪や差別につながるAI使用や、気候変動の加速は、規制や対応を上回るスピードで進んでいます。これらの本質的な解決と、国連中心の国際協調を取り戻すため、事務総長は国連総会に先駆け、9月22、23日と「未来サミット」を開催し、岸田首相(当時)を含む首脳級が出席しました。


未来サミットの前夜祭「アクションデイズ」の様子
今年3月24日、国立競技場に66,000人が参加した「未来アクションフェス」実行委員会のみなさんと。
外務省の担当者と、日本の市民社会(SDGsジャパン)関係者と意見交換

2.   「核兵器廃絶」はどのように語られたのか

 採択された成果文書「未来のための協定」では、核兵器廃絶に関する文言も盛り込まれました。昨年から弊法人では明治大・山田寿則さん、長崎大・鈴木達治郎さん、河合公明さん、西田充さん、元駐クウェート大使・小溝泰義さんらと意見交換を実施、初稿から議論をウォッチしてきました。日本の市民の声を届けるため米・国連本部に渡航し、NGO「SDGsジャパン」や未来アクションフェス関係者らと活動しました。

 特定の国が核軍縮の記載に反対していると聞いていたので、核兵器廃絶が成果文書に記されたこと自体は非常に評価できます。ただ、今年1月の草案では「核兵器のない世界を追求する」ことや核兵器禁止条約を念頭に「非人道的で無差別な兵器を禁止する条約の普遍化」などを盛り込んでいました。しかし政府間交渉を経て行動指針は「核兵器のない世界というゴールを推進する」と控えめな表現に。「人道性」にかかわる文言が一部削除など、当初からかなり弱まった内容で合意に至りました。

 一方で核拡散防止条約は最終文書を採択できず、核禁条約に核保有国やその同盟国が背を向ける中で、合意に達したことは、核軍縮への新たな出発点になります。(外務省担当者からは「日本が力を入れたのは人間の安全保障や核軍縮などだ」とのコメントあり。)核兵器禁止条約の普遍化にも寄与すると考えています。

 主な内容(要旨)は次の通り。▶最終目的は全面完全軍縮。即時目的は核戦争の危険の除去と軍拡競争の回避。▶軍縮・不拡散枠組みの強化。▶非核兵器地帯条約など既存の安全保証の尊重と核軍縮・不拡散の完全で効果的な履行を加速。▶奪いえない原子力の平和利用権利。

【参考】「未来のための協定」原文はこちら

 なお、現地では、日本の市民社会も様々なサイドイベントに参加・登壇したり、採択直前の最終稿に対する分析を踏まえた提言と評価を、SDGsジャパン加盟団体参加者の連名でいち早く発信しました(核軍縮以外のテーマの評価はこちらをご覧ください)。ほか、9月23日には現地からの報告のライブ配信を実施し、21日、22日には、未来アクションフェス実行委員会によるインスタライブに出演しました。NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」柴田哲子アドボカシー・シニア・アドバイザーのご報告はこちら


未来サミット開会の前々日、中満泉国連事務次長と面会し、「おかざりではなく、意義あるユース参画を実現したい。未来のための協定の合意は極めて難しいが、これから徹夜で交渉する」と。


3.   被爆者・核被害者の声と、ユースの参加

 私は現在、核兵器廃絶を目指して政策提言を行う一般社団法人「かたわら」を運営しています。昨年は鳴門市議会、藤沢市市議会で核禁条約参加の意見書採択に貢献。理事3名、その他大学生もかかわっています。

 同協定では、それぞれの国や国連などの場で意思決定プロセスに若者の参加を後押しすることも明記されました。サミットには約7000名が参加し、うち1600名(20日時点)が若者(15~24歳)でした。期間中、ICAN、ピースボート、核時代平和財団、SGIらとサイドイベントを共催しました。渡航前に、広島・長崎の被爆者団体、NGO、専門家らと意見交換を行いました。被爆者のみなさんのメッセージや、核軍縮プロセスに若者や核被害者の声を反映させる重要性を訴えました。 

 サミットには世界各国から多くの若者が集まりました。バングラデシュの人権活動家などと交流を深め、「核の問題は環境や人権などあらゆる問題につながっている。横のつながりを持てたことは大きな収穫だ」と感じます。

米国の核時代平和財団、ICAN、ピースボート、カザフスタン、キリバス両国らとのイベント共催

サイドイベントでの発言
広島の箕牧智之広島県被団協理事長と、田中聰司広島被爆者団体連絡会議事務局長と
湯崎英彦広島県知事、松岡宏道広島県議会議員と
鈴木達治郎長崎大学核兵器廃絶研究センター教授と
調漸公益財団法人長崎平和推進協会理事長、中川 正仁同事務局長らと

4.   核兵器廃絶と、本質的な解決を目指して、活動を続けます

 未来サミットを受けて、国連の発信拠点「SDGメディア・ゾーン」から「平和と安全保障の課題における若者のリーダーシップ」について考えるパネルディスカッションに登壇しました。私が、被爆者の方々の苦しみの経験談に心を動かされてこの活動に深く関わるようになったことや、核兵器も気候危機も人類史的な脅威であり、気候変動課題に取り組むユースと連携していることなどについて共有したのに対して、新設された「国連ユース・オフィス」のトップを務めるフェリペ・ポーリエ初代ユース担当事務次長補は「若者は軍拡の流れを止め、共通価値を創ることができる」と賛同を示しました。加えて、彼は「ユースの役割は既存の価値観や枠組みをかき回すこと」と語りました。今後の活動に励む上で大きな手ごたえになりました。国連広報センター根本かおる所長のレポートはこちら

 今回、企業とのパートナーシップも広がりました。広島の原色美術印刷社さんから、再生アクリル(回収したアクリルを粉砕し再原料化したもので、製造時のCO2の排出量は71%削減。また再生材の含有率は80%と、環境に配慮)を使った、オリジナルデザインの折り鶴グッズ「アクヅル」を提供いただきました。平和を伝えるお土産として活用させていただきました。

 「未来のための協定」は、SDGs(持続可能な開発目標 / 核兵器廃絶は触れていない)の次の目標(2030年~)のベースになります。SDGsで多くの学校や企業が気候変動に関心を寄せたように、核兵器廃絶を目標の1つに掲げられるよう、市民社会と連携して働きかけを続けます。

フェリペさん、井上波さん(TBS)、モデレーターの根本かおる所長と
アクヅルはみなさんに大変好評でした

こうしたプロジェクトの様子が、各種メディアでも報道されています。

渡航費と報告会合開催のクラウドファンディング(目標120万円)を実施しました。9月4日から9月30日までの短い期間にも関わらず、58名の方から47万9000円のご支援をいただきました。本当にありがとうございます。

なお、本プロジェクト(事前・事後の広島・長崎での意見交換会実施を含む)は、「ヒロシマ平和創造基金」「核なき世界基金」のご支援をいただきました。



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